【届かない電話】
もうすぐ四年になる。
会社をクビになって社宅を追い出され、
今の家に住み始めて最初にできた友達が、ヒデさんだった。
ガスの開栓が間に合わず、引越したその夜は銭湯へ行った。
そこでヒデさんが声をかけてくれた。
ベッドと大きなお仏壇で埋まってしまうような狭い部屋に住んでいて、
たまにお茶しに遊びに行った。
おかずのお裾分けを届けたり、
若い頃の苦労話、ご両親のこと、ご兄弟のことを聞かせてもらった。
日蓮の仏法を信奉する団体の講話に誘われたこともあった。
和裁の仕事をして、シクラメンを育てるのが上手で、
優しくて信心深いお婆ちゃんだった。
たまに思いついて電話すれば、
「あんたのこと、いつも思ってるよ」応援が染みた。
律儀で、慇懃で、とても温かい人だった。
コロナ禍に行くのはやめて、
電話さえご無沙汰になっていたから、
昨日家の前を通ってみた。
空室だった。
「おかけになった電話番号は現在使われておりません・・・」
もう電話も、届かなかった。
ヒデさんは、今頃どこで何をしているんだろう?
あいも変わらず、わたしのことを思っていてくれているだろうか?
ニッコリ微笑んでありがとうねと言っている顔が浮かぶ。
切なさとともに見上げる星夜。。
こういう、人と人との関係もある。
20、30代で命を落とした若者たちも、色んな人と人との関係を、持てていたはず。生きてさえいれば。
戦争を冷静に見つめるプログラムを始めます。
今までリーダーのための歴史教室にご縁のなかった方にも、
どうか届きますように。
詳細URLはこちら